エロ漫画もいいけど劇場版「艦隊これくしょん ─艦これ─」の話もどうだい！

２０１５年３月に放送された艦これのアニメは、多くのファンの親しまれ、惜しまれながら最終回を迎えました……

その最終回において続編制作が発表されましたが、それが映画であるのか、それとも第二期であるのかが解らず、発表からしばらくは謎のままで時が過ぎていきました。

そして２０１５年の８月に、角川映画創立４０周年の記念アニメ映画作品として劇場版の艦これが決定したと報が飛び、２０１６年の秋に公開されると、多くのファンを沸かせました。

アニメの最終回からの続編となると今作は、舞台が第二次世界大戦下において、日米共に激戦を繰り広げた「アイアンボトム・サウンド」舞台に、吹雪を始めとする他の艦娘達の謎に迫ったシリアスな内容の映画として製作されていきました。

さてその前に、「アイアンボトム・サウンド」とは何かと、疑問を持たれる方が多いと思いますので、簡単に説明させていただきます。

アイアンボトム・サウンドと書いて時の通り、鉄底海峡と呼ばれており、南海の島であるサボ島やフロリダ諸島とガダルカナル島の間にある海峡が、そう呼ばれています。

そこは太平洋戦争時、南海の戦場で重要拠点となるヘンダーソン飛行場を巡る日米両海軍の衝突戦が繰り広げられた激戦地でもあります。

第二次世界大戦の海戦において有名な第一次ソロモン海戦やサボ島沖海戦に第三次ソロモン海戦とルンガ沖夜戦にフロリダ沖海戦と、数多くの戦艦や艦艇が激戦を繰り広げ、その激戦の果てに沈んだ艦艇が眠る地として有名な場所でもあります。

またこの「アイアンボトム・サウンド」は２０１３年の艦これの秋イベントである「決戦！鉄底海峡を抜けて！」として登場し、難易度の高いマップとして多くのユーザーを悩ませた通り名でもありました。

そして魅力的なクリア報酬から、艦娘の被害を戦略に入れた「捨て艦」戦法が多用された事でも有名なマップでもありました……

捨て艦とは何かと疑問を持つ人もいるので、これにもついて簡単に説明しておきます。

捨て艦とは、大破や轟沈などの被害を気にせず、マップクリアの為に犠牲をいとわない、強行攻略戦法の事です。

貴重な艦娘ではなく、ダブってしまった艦娘や資材確保の艦娘を轟沈覚悟で戦場に投下すると、実に鬼畜なやり方ですが、このアイアンボトム・サウンドのマップは攻略困難な内容で纏められ、当時の艦これユーザーにとっては、まさに犠牲覚悟で挑まなければいけないと、ある意味で恐れられたマップでもありました。

そんな艦これユーザーや、歴史においても重要な場所でもある海峡が、今作の映画の舞台となり、アニメ作品である艦これの決戦の舞台として描かれていきました……

そんな劇場版本編の内容は以下の様になっています。

注意・なおネタバレも含みますので、ご注意をお忘れなく！

──ＭＩ作戦の激戦を勝利し、南方への進軍の機会を得た艦娘達は、ショートランド泊地を新たなる拠点として、深海凄艦攻略を開始していた。

嵐の前の静けさの中で、平穏な時間を過ごしていた吹雪達だが、吹雪は奇妙な胸騒ぎを感じていた……

自分を呼ぶかのような、悲しげな声が時折聴こえていたのだ。

南方の初戦は鳥海が率いる第８艦隊による強襲攻撃によって行われ、深海棲艦輸送船団殲滅戦が開始されていた。

深海棲艦の激しい抵抗と接戦の末に、島海による第８艦隊の奇襲は成功し、深海棲艦輸送船団は壊滅する。

勝利に喜ぶ第８艦隊の艦娘達だが、目の前に不気味な謎の声が響き、その海域を警戒探索する。

海域を探索する中で発生する、艤装を腐食する赤い錆に、周囲に響く異様な声の中で、不安に駆られながらも探索を続ける艦娘達。

その探索の中で、彼女達はかつて海底へと轟沈した筈の如月を発見する。

無事に保護され救助された如月は、再び吹雪、夕立、睦月と再開を果たす。

二度と会えないと思っていた如月の再開に感激し、臆面もなく喜ぶ睦月だが、如月の身体には異変が生じていたのだ。

如月の身体全体に侵食するように蝕む謎の痣。

睦月を心配かけまいとすぐに治ると言うも、原因不明のその浸食は収まらず、如月を徐々に苦しめていく事となる。

また如月は自分が轟沈した記憶が欠落し、不意に起こる意識の消失などに苛まれながら日々を過ごしていく。

苦しむ彼女の為に、精一杯に励ます睦月だが、如月に降りかかる異変はひどくなり、ついには突然意識を消失し、破壊衝動に駆られ無意識に港湾施設に砲撃し破壊してしまう。

自分でも抑えられない衝動に苛まれ、自分が既に深海棲艦になってしまったのだと、精神と肉体を疲弊させ、如月は追い詰められていく。

長門を始めとする上層部の艦娘達は、如月がやがて深海棲艦になる事を告げる。

そして、吹雪は驚愕の事実を告げられてしまう。

戦闘で轟沈してしまった艦娘が海底の底へと沈むと、深海棲艦として蘇る事を。

そして加賀もかつては轟沈し、深海棲艦として艦娘と敵対していた事を告白する。

艦娘の轟沈が深海棲艦を生み出すも、深海棲艦を轟沈させれば、沈んだ深海棲艦は艦娘として蘇り、転生する、この世界の理を教えられる。

でもそれは永遠に終わらない戦いを意味していると、吹雪は絶望を抱くも、もしすべての深海棲艦を倒し、彼女達を艦娘として蘇らせれば、この不毛な戦いを終わらせる事が出来ると希望を託す。

艦娘と深海棲艦は同じ存在で、轟沈と転生のサイクルを繰り返している事と、如月を本当の意味で救うには、いずれ深海棲艦と化した彼女を倒さなければいけない事を知った吹雪は、心の中にわだかまりを持ち、そして南方海域に響く声をさらに明瞭に聞き入れていくようになっていった。

その間にも南方海域の異変は拡大し、海面の赤色の変色は広がりを見せていた。

赤い海面に触れればあらゆる生命は死滅し、艦娘は無事であるも、艤装は赤錆によって侵食され損傷、破損することが確認された。

広がりを見せ続ける赤い海面。

その発生地は、かつて多くの艦艇が大破轟沈した海域である「アイアンボトムサウンド」の中心から広がっていた事を知る。

そしてその浸食は、艦娘達の南方の前線地・ショートランド泊地に達すると判明してしまう。

もしそうなってしまえば、南方の足掛かりを失ってしまうだけではなく、下手をすればすべての海域に被害が及ぶかもしれないと、戦慄が増していく。

その中で長門は、今現在集結している艦娘によるアイアンボトムサウンドの短期攻略決戦を決行を決意し、攻略のカギに吹雪にアイアンボトムサウンド最深部突入の任務が与えられる。

吹雪には赤い錆の浸食の影響がなく、艤装を侵食されない吹雪がこの海域の謎を解くカギだと希望を託される。

そして海域に響く謎の声の正体を突き止める為にも、彼女はその任務を受け入れる。

作戦が決行され、海域へと向かう艦娘達。

如月は睦月を見送る事しかできなく、無事に戻る事を祈りながら、彼女達を見送っていたが、如月の浸食は限界を迎えようとしていた。

アイアンボトムサウンド最深部へと向かう為の戦闘は激化の一途を辿り、多くの艦娘が傷つき大破・撤退を余儀なくされていた。

最深部へ向かうも、残ったメンバーは大和と吹雪に睦月の三人だけだった。

大和による火力援護により最深部まで向かうも、深海棲艦の圧倒的な物量を前に窮地に陥ってしまう。

敵の犠牲をいとわない砲撃の前に吹雪は危機を迎え、身を挺して彼女を守る大和が大破し、吹雪と睦月は懸命な大和の砲撃支援により、最終突入へと進むも、睦月は轟沈寸前の窮地を迎えてしまう。

だがそこに深海棲艦と成った如月が現れる。

しかし彼女は自我を保ち、深海棲艦へと砲撃を行い、睦月を救出する。

一瞬の形勢逆転の好機に、吹雪は突入を敢行し、アイアンボトムサウンドの中心部へ突入を成功する。

大海原に不自然に空いたアイアンボトムサウンドの最深部である底には、深海棲艦と化したもう一人の吹雪が彼女を待ち受けていたのだ。

そこで吹雪は知る。

かつて自分が鎮守府配属前に轟沈していた事を。

深い奈落の海の底へと沈む中、吹雪は仲間達の元へと帰りたいと願い、そして沈みたくないと抗い、誰も沈ませたくないと強く想った事で、彼女は深海棲艦として蘇る事なく、艦娘として復活していた過去を持っていたのだ。

しかし、それは吹雪の中のもう一人と分離させてしまう事を意味しており、アイアンボトムサウンド最深部にいたもう一人の吹雪は、沈んでしまう事を嘆き、轟沈してしまう事を悔しいと苛立ち、海の底へと沈む事を苦しいと恐れた、吹雪の負の思念が分離し、深海棲艦化した、もう一人の吹雪だったのだ。

もう一人の自分と対峙する事となった吹雪は、深海棲艦と化した吹雪の負の感情によって追い詰められてしまう。

誰もいない海の底で一人だけおいていかれたと、自分を捨てた吹雪を恨み、憎しみを惜しげもなくぶつけてくる深海棲艦の吹雪を前に苦戦を強いられてしまう。

そのまま取り込まれようとしていた中で、仲間達の想いが吹雪を奮い立たせ、深海棲艦と化した吹雪の負の感情を受け止め、絶望に沈んでいた彼女に希望を与え、かつて自分が捨ててしまった負の感情を受け入れ、深海棲艦と化した吹雪を浄化した。

こうして長かったアイアンボトムサウンドの戦闘は終結を迎え、海域の浄化に成功する艦娘達。

南方海域の平和は取り戻され、海域のすべての深海棲艦は光の塵として消滅していくが、如月も例外ではなかった。

消えゆく如月は、睦月を助けられた事を喜び、またいつか再会しようと誓い、静かに空へと消えていった。

南方海域での戦闘後。

吹雪は第１１駆逐隊の旗艦として前線を戦い続けていた。

自分がかつて抱いた海の底へと沈んでいく負の想いと、誰かを守りたいと願う揺ぎ無い想いの二つを抱き、この戦いを終わらす為に、吹雪は戦い続けていく。　

そして如月は、艦娘として再び転生した睦月と共に、穏やかな日々を過ごしていた。

──と、以上が今作の大幅な内容とも言えます。

今作の中で描かれていたのは、テレビアニメでの続編でもあり、艦娘と深海棲艦の存在など、艦これの謎に迫った部分とも言えます。

何故に彼女達は戦うのかと、また艦娘と深海棲艦とはと、大きな謎を残していた艦これ内で行われている戦闘の事実。

多くの艦これファンが抱いていた考察が活かされていた展開でもあり、それが物語の重要な根幹として描かれ、艦娘達が何故に戦うのかと、その意味が全編を通してシリアスな展開で描かれていました。

コミカルな部分も確かにありますが、この劇場版の中に描かれているのは、兵器として造り出され、そして沈んでいった戦艦の想いが、自分達を生んでいるのだと知り、深海棲艦を開放する為に戦う、艦娘達の決意のシリアスさが、この作品の重要な見どころとも言えます。

何故に戦っているのか？

自分達の過去を知り、海へと沈んでいく恐ろしさを知りつつも、そんな想いや呪縛から解放させるために、終わりなき戦いを続けていた、彼女達の直向きさや決意が、この作品の大きな魅力とも言えます。

戦う事を望みたくはなくも、誰かを救うために戦いたいと、少女たちが砲火や爆炎の中で戦い続けている理由は、深海棲艦と化した艦娘を救う為だと、怨念と無念によって堕ちてしまった彼女達を救うべくに奮闘している彼女達の懸命な戦いは、その事実を知った後から、さらに深く物語を魅入らせてくれる内容となり、彼女達の戦いがどれだけの想いを抱くのかと感じられる部分でもありました。

また今作では一番の見どころとなるのが、轟沈してしまった如月の存在です。

深海棲艦として蘇ってしまった如月。

自分が変わってしまう事を恐れ、それを睦月に知られたくないと嘆く彼女ですが、そんな彼女を救おうと奮闘し、戦う睦月のひたむきさや、そんな彼女を救おうとし、身を顧みずに戦地へと赴く如月の決意など、この劇場版の一番の見どころとも言えます。

またこの劇場版の主題歌でもあり、また艦娘達の想いを歌詞にした「帰還」も、この作品を彩る名曲とも言えます。

テレビ版のエンディングを歌っていた西沢幸奏さんの声で歌われる、帰還の歌詞は、如月と睦月の想いを歌にしているとも言われ、また吹雪の想いを歌詞にしているとも言われています。

沈んでしまうも、誰かを助けたいと、先の見えない闇の中に、明かりを見つけて進んでほしいと歌われる歌詞。

そこにはかけがいのない希望が込められた歌だとも言えます。

そんな熱く、艦これの想いを形作った内容の劇場版は、見て損の無い映画作品とも言えます。

戦艦同士の激しい砲撃戦もさることながら、大迫力の展開が最大の見所となる今作。

艦これを極めるならば、見て損の無い作品です！